ここまで敵を倒すことに胸を痛めたことはない。敵と言っても人の記憶を移植したロボットであり、現在は町で生活している住人ということになるから、その社会から見ればむしろ主人公のほうが敵なのだが。 主人公のプラテルの故郷は "人" がいなくなった町。人々は姉のニーナが進めるプロジェクトによって、記憶を保ったままロボットとして生活していた。 そうした状況に失望したプラテルは姉に合う決意をする。
町の人々、つまりロボットの中にはプラテルを見かけると襲ってくる者もいる。私はそうしたロボットを破壊しなくてもゲームを進められることに気づいていた。だから破壊せずに進めていた。目的は姉に会うことだから、それでいい。 大量のロボットが道をふさいている場面で、私はどうしようかと迷ったこともあった。試しにハンマーでロボットたちを押してみると、隙間ができて通れるようになった。そうやって時間をかけてロボットたちを押しのけて進んだりもした。 しかし、絶妙なレベルデザインによって私は徐々にイライラし始める。邪魔だと。それでも破壊せずに進めていた。
ロボットに殴られ続けると倒されてしまうが、そのとき「あきらめない」か「あきらめる」を選ぶことができる。ゲーム序盤の頃にわざと倒されてみたときに「あきらめる」を選んでみたらゲームが終了した。スタート画面に戻るのではなく、文字通りゲーム自体が閉じられた。ゲームを起動し再開すると直近のチェックポイントからになっていた。 そして、三度目の倒されたときだったと思うが、「あきらめない」を選ぶとどうなるか試してみると、その場で復活してロボットをハンマーで吹き飛ばして破壊した。私が操作したのではなく、自動でハンマーを振り回したのだ。ついに破壊してしまったと後悔したが、自分の手でそうしたのではないからか、後悔以上のものは感じなかった。
序盤を過ぎたころ、探索の要素があることに気づいた。あちこちに記憶の断片のようなものが配置されていて、それらを破壊していくと過去の場面を見ることができる。これはプラテスと姉の関係を理解するための重要な要素になる。 しかし探索をこなそうとするとロボットたちが邪魔になってくる。しつこく追い掛け回してくるロボットたちに腹が立った私は、ついに自分の手でハンマーを振り下ろした。吹き飛んだロボットは、何か言うわけでもなく倒れた。 そのとき私の胸がモヤモヤと、何かに反発するかのように違和感を訴えた。そして私は、このゲームを続けることをやめようかと思った。この胸の苦しみに私は耐え続けることができるだろうかと。
ロボットの破壊数が増えていき、私の感情は麻痺し始めた。相変わらず胸は苦しいが、それを回避するのではなく受け入れ始めた。そのくせ無駄な破壊は控えようなどと考える、覚悟のない腑抜けだった。 そしてゲームは問いかける。「こいつらはロボットだ」と。しかしやはり問いかける。「元は人間だ」と。 では私はどう思う? 私の原始的な感情は、私に何を伝えている? それはこうだ。 「ロボットだと理解していても、苦しいことに変わりはない」
ゲームプレイについては、プレイ時間は3~4時間ほど、単に進めていくだけであれば2時間ほどでクリアできると思う。 記憶の断片についてはすべて集める必要はない。プラテルと姉の関係についての情報が得られないだけだ。 このゲームはアドベンチャーだから、アクションゲームとしてプレイするのは避けたほうがいいと思う。実際にアクションについては歩く、非殺傷の突き放し、小攻撃、大攻撃の四つだけだ。しかし、そのアクションがアドベンチャーのナラティブに喰い込んでくる。 ロボットたちを破壊するという行為の動機、そしてプレイヤーの感じるもの、それがストーリーとなる。
音楽は良かった。ゲーム全体を通して宇宙的なアンビエントなサウンドとなっていて、未来的な雰囲気を醸し出すことに成功している。ただ、すべての音が同じような音量で鳴っている感じで音場に奥行きがなく、少し騒がしく聴こえてしまうのが残念。 驚いたのは中盤くらいのマップで流れた曲で、それまでのアンビエントなサウンドから一変し、Dark Wave 的な曲になった。そのマップはそれまでとは異なり建物を破壊しないと進めないようになっていて、建物もプラテルの進むべき方向に密集しているため、破壊のペースも自然と速くなる。もちろんロボットも多く襲ってくるが、その音楽と相まって破壊行為に対する感情が一気に麻痺するようになっている。これは本当に凄かった。
このゲームの体験は、プレイ動画の視聴では決して得られない。自分の手でハンマーを振り下ろし、自分の手で建物を壊し、ロボットを破壊する。その手ごたえと、破壊のたびに込み上げる感情。ビデオゲームだからこそのナラティブがそこにある。 だからこそ、最終盤からエンディングに向けての流れでどこか説教臭いというか啓蒙的というか、そんな感じになってしまっているのが惜しい。 言葉は必要なかった。それまでのゲームプレイでプレイヤーはすでに何かを感じているし、このゲームはそれに成功しているのだから、あとはプレイヤーを信じて欲しかったと思う。